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 リニックもまた、一人白の空間に居た。
 そして、目の前には浮かんでいる存在が一人。

「……やれやれ、ついに『剣』の封印を解いてしまったというわけか」
「あの、あなたは……?」
「僕? 僕はね……この世界、次元、存在全てを作った『神』、その代理人とでも言えば良いかな。もっとも、彼女は力を使いすぎてね。今は少しお休みさせているんだ」
「お休み? 神の代理人?」

 いったい全体、何を言っているのかさっぱり分からなかった。
 さらに、彼は話を続ける。

「僕の名前は、……いいや、名前すらも忘れてしまった。今や、地位で呼ばれることが殆どだからね。僕は影に隠れた神、その名も影神(えいしん)。一般的に神と揶揄されているガラムドはただの管理者さ。神からある一定の権利を委譲しただけに過ぎない。つまり、彼女も管理される立場であり、いつ排除されてもおかしくない。そして、その管理者の上には僕たち影神と真の神が居て、管理者の下には管理者を補佐する役割として眷属を置いた。それで世界はしっかりと回っていくはず、だった」
「だった?」
「人間はあまりにも愚かな行為を連続したのだよ。そうして一度、人間を滅ぼした。正確には、人間に選択の余地を与えた。滅びるか、種としての人類を残すために僅かな人間だけを残すか、と。結果は後者を選択した。当然と言えば、当然の結果だ」

 一息。

「一度、人間が地上から居なくなった世界は、人間以外の動物の楽園になった。動物は人間以上の知能を持たない。だから記憶エネルギーを使われることはない。まあ、そもそもあの時点で記憶エネルギーに気づく人間も居なかったわけだから、別に問題なかった訳だけれどね。でも、そこで我が儘を言い出した存在が居た」
「それは……ガラムド?」
「ご明察。ガラムドは再び人間を作ったのさ。人間を作れば、また平和な世界を送ることが出来る。実際は、管理に暇を弄んでいたんじゃあないかな。それについてはあまり考えないけれど、ともかく僕は肯定することにした。もし今度こそ人間がだめな世界を作ったらそのときは人間を滅ぼそうという判断の下、地球に自衛機能を齎した」
「それがメタモルフォーズだって言うんですか?」
「君は話が分かるようで助かるよ。そうだ、その通りだ。メタモルフォーズは地球の自衛機能を持っていた。つまり、地球に何かあったらメタモルフォーズが攻撃をする。そうして地球に自衛機能を持たせることにした、というわけさ」
「でも、偉大なる戦いが起きてしまった……」
「ああ、君たちはそう呼んでいるんだったね。僕にとってみれば愚かな争いだよ。人間は、とうとう記憶エネルギーの存在に気づいてしまった。まあ、メタモルフォーズも永遠に動ける訳では無い。記憶エネルギーの詰まったエキスを定期的に補充する必要があった。その為に生み出されたのが、知恵の木の実だ。それに、人間は気づいてしまった。気づいてしまったんだよ」

 さらに、影神は歌うように話を続ける。

「知恵の木の実から生み出されるエネルギーは、これまでのエネルギーとは違いクリーンで莫大なエネルギーを生み出すことが出来る、ということに人間は気づいてしまったんだ。これは不味いと思ったのが、僕たち神であり、管理者であるガラムドだ。直ぐに、自衛機能を働かせて人間の数を減らそうと試みた。しかしそれでも人間は争い――最終的に、どうなったかは君が良く知っていることだろう」
「もともと一つだった星が六つに分割した、ということですね……?」
「そうだ。そもそもあの星は分割されるべきではなかった。分割されると言うことは、記憶エネルギーの容量が減るということなのだから。それに、記憶エネルギーは最終的に減少傾向にあることは分かっていた。だから、記憶エネルギーを一度充填せねばならなかった。それが、君たちの知る『血の海』だ。あれは人間やその他動物を液体にすることで、一度記憶エネルギーにした。それは誰も悪いことじゃあない。悪いのは、ここに生まれた君たち自身だ」
「でも、それは……」
「人間はこの世界を滅ぼす存在だ。だからこそ、人間は一度滅ぼした。にも関わらず、この世界は滅び行く定めにある。何故か? それは人間がこの世界の記憶エネルギーを無駄に使い倒してきているからだ」
「違う! 人間は、変わろうとしている。絶対に、世界を滅ぼすなんてことはあり得ない」
「あり得ない? それは誰が言っていることだ。誰が保証することだ。誰が宣言することだ! この世界を滅ぼそうとしているのは、他ならない人間どもだ!」
「そうかもしれないな。確かにそれは間違っていないよ」

 影神の背後から、声が聞こえる。
 剣を構えていたのは、カラスミだった。
 カラスミはその剣を影神の首に当てていた。

「……何がしたい?」
「動くな。その時点でお前の首をかっきるぞ」
「……面白いことを考えるモノだね、人間のくせに」
「五月蠅い。ここは何処だ。我々は何のために連れてこられた。理由をはっきりと述べろ」
「と言われてもねえ……。君たちはあくまでも、リニック・フィナンスの『ついで』にやってきただけに過ぎないし」
「何だと?」
「そもそも、影神と人間が対等の立場に居る時点で間違っているということに、何故気づこうとしない?」

 その場から姿を消す影神。

「何処だ! 何処に隠れるつもりだ!」
『本来ならば……誰にも見せることは無いのだけれど、これは余興だ。君たちに見せて上げようじゃあないか。少々パーツが足りないけれど、致し方ないことだ。これについてはオール・アイに責任を取って貰うことにしよう』
「何をするつもりだっ」

 彼女の言葉を遮るように、目の前の白い壁が上にスライドしていく。
 そこには宇宙空間が広がっていた。そして、それぞれの星がちょうど見える状態になっている。
 その星がゆっくり、ゆっくりと動いているのが感じられた。

「……まさか、影神! お前はいったい……」
『剣の力を利用して、この世界をもう一度一つにする。その衝撃で今生きている動物は滅んでしまうかもしれないが、記憶エネルギーは充填されている。そこから生物を生み出すことなど造作も無い。さあ、止めたいと思うなら止めてみるが良い、リニック・フィナンス!』

 

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