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「そう言って貰えると、助かるよ。学者は、嫌いじゃあないが、ちょいとばかしいけすかないやつも居ることだしな」
「……それは言わないでおいていただけると助かります。そして、それが誰であるかと言うこともあまり考えないでおきましょう」
「そうして貰えると助かる」

 そうして、リルーとピローの会話は終わった。

「……それで、僕たちはどうすれば良いのですか?」

 ラムスの言葉を聞いて、村長が何かを話そうとして、学者達に目を向ける。

「……残念ながら、今は何も分からない、というのが現状でな。手出しは出来ん、と言ったところだろうか。なので、君たちにはここで待機して貰いたい。何かあったときには直ぐに出撃出来るようにね」
「出撃……ですか。他の親衛隊は呼ばないのですね?」
「現状は、な。何せ未知数の存在だ。今は呼んでも良いかもしれないが、彼らにも家族がある。……これを言ってしまうと、非常に心苦しい話だが、」

 それを聞いたラムスは小さく咳払いする。

「別に良いじゃないですか。つまり、僕とピローは孤児で、誰も家族が居ないから最悪死んでも問題ない、って話ですよね」
「ラムス!」

 リルーが制しようとするところを、村長が手で制す。

「……間違ってはいない。それを否定しようとも思わない。だが、だからといって、君たちの命を無碍にするつもりもない。それは、分かってくれ」
「それは……理解しているつもりです」
「本当かね?」
「村長の前で、嘘を吐くようなタイプに見えますか?」

 言ったのはピローだった。

「ピロー……。まあ、君たちは仲が良かったからな、リルーもそうだったか?」
「ああ、はい。そうです」

 リルーが合間に入って、会話に参加する。

「……君たちは仲が良い。それを忘れてはならない。いや、忘れるというか、実際には、仲が良い友人を作っておくべきと言えば良いか……」
「何を言っているんですか、村長。こんな重要な時に」
「こんな重要な時だからだ、リルー」

 リルーの言葉に、村長はそう返す。
 村長はさらに話を続ける。

「我らリザードマンが短命の種族にある。長生きできても六十年が精一杯といったところだ。……私はね、もう五十七になる。はっきり言って、寿命を迎えてもおかしくない年齢なのだよ」
「村長、こんなときに何を……」

 バルダルスの言葉に、なおも村長は話を続ける。

「私はもう少し生きていけると思っていた、そんな確証は一切無いのにな。そして、仲が良かった友人はどんどん消えていった。文字通りの意味じゃあない、死んだということだ」

 淡々と、村長は話を続けていく。
 それに彼らはただ聞くことだけしか出来なかった。
 話を聞くことだけしか――選択肢か浮かばなかったのだ。

「……私は、長く生きすぎたのだろうか。そうは思っていなかった。だが、私は、こうも長くリザードマンとして生を受けるつもりは無かった。友人がどんどん居なくなり、後は私だけ? そんな世界には長く生きたくなかった」
「……村長、落ち着いてください。今、あなたが落ち着かねば誰が指揮官として役目を果たそうというのですか」
「もう少しだけ、話をさせてくれないか」

 バルダルスは、それ以上何も言えなかった。
 村長は名残惜しそうに、話を締めくくる。

「若人よ。今起きていることを何とか乗り越えて……それでも何度か様々な難題に直面するかもしれない。そのときは、どうか諦めずに今回のように力を合わせて欲しい。……ああ、言い直そう。別にリルーたちに向けて言っている訳じゃあない。今、ここに居るリザードマン、全員が対象だ。そうでなくては、何も始まらない。一人で出来ることなど、限られている。意味が分かるかね? 複数人なら、解ける問題もあるということだ。だから、絶対に諦めてはいけない。そのときこそ真価が問われるというものだ。その『友情』というものが、」
「はい。話はお終い」

 唐突に、話題が中断する。
 理由は彼の背後に立った、謎の生命体だった。
 それは最初、リザードマンかそれ以外の存在か判別はつけられなかった。だから、どんな言語を話しているかもラムスたちには分からなかった。
 言語を理解できたのは、学者のリザードマンだ。特にいち早く理解できたのは、リルーだった。

「アース語……、ということはアースの人間ですか……!」

 リルーの言葉に、笑みを浮かべる。
 それは、白と赤を基調とした布を重ねただけの単調な服に身を包んでいた。
 黒い長帽子を被っていたそれは、やがてけたけたと笑い出す。

「ああ、良かった。私たちの言語を理解できるほどの知能があるようで……、本当に良かった」
「む、村長に何をする気だ!」

 ピローは槍を構え、その白衣の存在に矛先を向ける。
 溜息を吐いて、やがて一回転すると、

「……これで、あなたたちにも聞こえるかしら? 聞こえる、というよりは理解できる言葉で話せていると思うのだけれど」

 流暢な言葉だった。
 アースにはそれくらいにこの星の言語が伝わっているのか、と学者が興味を示してしまう程に。
 しかし、それは――それを考えること自体が間違っていた。

「私の名前はオール・アイ。ちょいとこの星には野暮用でね。今落下してくると思う宇宙船に乗り込んでいたのだけれど、ちょいと暇になったものだから、先に乗り込むことにしたの。……野暮用、聞いて貰える?」

 首を抑え付けられている状態にある村長は、何度も小刻みに頷いた。
 それを見たオール・アイは笑みを浮かべると、

「そう言って貰えると助かるよ。楽に終わりそうだ。……私の望みはね、あるものを手に入れることなのよ」
「ある……もの、だと?」
「はい、茶々入れない」

 どこからか生み出した氷のナイフを村長の首筋に突き立てる。

「村長っ!」
「はいっ、動いちゃだめだよ。動いたらその場でこのリザードマン……村長だっけ? の首を掻っ捌きますからねえ」

 歌うように。
 子供が歌を歌うように、そう続けた。
 はっきり言って、狂っている。彼らはそう思ったことだろう。しかし忽然とやってきたその異星人に太刀打ちすることは愚か、触れることすら敵わないのは、彼らの科学力以前の問題であるということには、未だ気づいていない。

「……わ、分かった。聞こう、聞こうじゃあないか。その『野暮用』というのを。ただ、私たちがそれを叶えられるかどうか……」
「あら、十分叶えられるはずのことだけれど。別に『あなたたちの命が欲しい』なんて無茶なことを言っている訳じゃあないんだし?」

 ぞわり、とそこに居るリザードマン全員の鳥肌が立った。
 実際には鱗がついているから、鱗がついていない部分だけとはいえ、それでも寒気がしたことには変わりない。
 今、笑顔で彼女はなんと言った?
 私たちの命を欲しい、と言っている訳じゃあない?
 だとすれば、いったい何の目的で、彼女はここにやってきたのか?

「……私は、『剣』を求めてここにやってきた。剣は何処? 教えてくれる人が何処に居るのかしら」
「剣……だと? あれを取られてしまっては、我々は何も出来ない! あれは我々の始祖が大事に保管しているものだ!」
「そう。ああ、そういえばリザードマンの始祖ってずっとここに居続けたのよね。なんとまあ、窮屈なこと。海だらけの部分って、とても退屈だったろうに」

 一息。

「じゃあ、あなたがそこへ案内することは出来る? だって、あなた村長でしょう? いろんな人がそう言っているものね。そうじゃあないと嘘は吐かせないですよ?」

 ぐちゃぐちゃな言葉遣いだ、と村長は思っていた。
 まるで幾つもの人間の魂がその中に入っているような、そんな気持ち悪い感覚。
 何故そんな感覚が咄嗟に思いついたのか、ということは置いておくとして。

「……分かった。私が案内しよう」

 村長は、ゆっくりと息を吸って、やがてそう告げた。

「村長!」

 リルーの言葉に、村長は答えない。

「あなたたちのリーダーが寛大な性格でとても助かったわ。それじゃあ、案内してちょうだい。一応言っておくけれど、嘘の場所に案内するとか、闇討ちをするようなら……どうなることか、分かっているわね?」
「そんなことを出来るほどの余裕が、今の私たちには無い」

 そうして、村長とオール・アイのみで、祠へと移動することになった。
 祠の前に到着すると、村長はゆっくりと扉を開けた。

「ふうん、カトルと同じデザインなのね。やっぱり『ガラムド』が啓示で命令した通りの建物と言った感じかしら……」

 何かをぶつぶつと呟いているようにみえるが、そんなこと村長には関係なかった。
 今の彼は、どうやってこの状況から解放されるかどうか、そんなことを考え続けていた。
 そして、村長は一つのプランを考えついた。
 扉を開けると、彼は急いでその剣を手に取った。
 しかし、それよりも早く、オール・アイの構えていたナイフが彼の右手を切り落とした。

「あがああああああああああああっ!!??」

 自らの切り落とされた腕を見つめながら、腕がついていた場所を左手で押さえる。
 しかし、押さえたところで血はどんどん吹き出してくる。

「残念だ。非常に残念よ。……もし普通にしていたら、痛みを与えること無くそのままあの世へと送っていっただろうに。変な抵抗をするから」

 笑っていた。
 こんな状況であるにも関わらず、オール・アイは笑っていた。
 苦しみもがく状況を見つめて、ただただ笑っていた。

「貴様は……狂っている……!」

 あまりの痛さに、倒れ込む村長。しかしその目線は未だオール・アイを追っていた。
 オール・アイは告げる。

「狂っている? そりゃあ、そうでしょうね。人間の観点から、或いはリザードマンの観点から見ても、私は狂っているのかもしれない。けれど、私は人間じゃあない。世界を超越した力を持つ『眷属』。その意味が分かるかしら? 私は、神に近しい力を持っているということなのよ」
「……何だと……」

 村長は痛みを必死にこらえながらも、会話に参加する。
 しかし、徐々に痛みの方が勝り、そして血も出すぎたのか、意識が朦朧としてくる。
 オール・アイは笑みを浮かべ、村長の顔を見つめる。

「安心しなさい。直ぐにこの村のリザードマンすべてを送って上げるから。これはあなたが犯した罪の罰よ。……ま、私が剣を手に入れたことを誰にも知られたくないからやる、ただの隠蔽工作に過ぎないのだけれど」
「貴様……」
「だから、安心して、死になさい」

 そして。
 オール・アイの持っていたナイフは、リザードマンの心臓を的確に捉えた。

 

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