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028

「しかし、そうなると、リルーの推測が正しいということになります! それだけは考えられません! あり得ないとしか言いようが……」
「しかし、現にこういう意見が出ていることは明らかだ。時間は。どれぐらいで落下する推測だ。……いや、それは既に聞いていたな、二時間だったか。こうもしちゃあいられん。一先ず小島には誰も向かわないようにしろ。そして、我々は厳戒態勢を敷く。その意味が分かるな?」
「……村民にはお伝えしないおつもりですか?」
「伝えないわけがあるか。今から私が話をする」
「村長が直接、ですか」
「そうだ。それ以外にどの方法があるというのだ」

 村長は会議室の奥にある一室へと向かう。そこには放送設備があり、村の一周に設置されているスピーカーからその声を聞くことが出来る。
 マイクロフォンのスイッチを入れ、声を発し始める。

「……これより、緊急の情報を報告する」

 その言葉は、村の中へと響き渡っていく。

『今、空を見上げれば分かることだが、何かが落下してきている。それについて、不安を感じている人も多いことだろう』
 外で待機しているラムスは、スピーカーを通してその言葉を聞いていた。

「結局、隠しきれない、と判断したわけ、か」

 誰にも話すでも無い、その言葉は誰にも届くことも無い独り言だった。

『そして、それは北東の無人島へ落下する見通しが立っており、落下による衝撃も懸念されている。推測では未だ確立出来ていないが……恐らく、村にも衝撃が発生する可能性がある。なので、今から外出を禁止する。また無人島への移動も禁止とする。もし、現時点であの無人島へ向かっている存在を知っていたら、情報を提供して欲しい』

 ぷつり、とスピーカーから音が聞こえ、放送が終了したのをラムスは感じた。

「……何というか、呆気ない説明だったな」
「おい、ラムス。何してるんだ?」

 親衛隊の一人、ピローが声をかける。

「おう、ピロー。どうしたんだ、急に。君から声をかけるなんて珍しい」
「お前がここでぼうっとしているから気になったんだよ。……で、あの話聞いたか?」
「あの話? 今、村長が言っていたことのやつ? だったら知ってるよ、ちょいと野暮用をしていたら運悪くというか運良くというか、その話を聞いてしまってね」
「そうか。だったら良いんだ」

 隣に腰掛けるピロー。

「何というかさ、……俺、怖いんだよ」
「怖い?」
「急に何かやってくるという感覚だよ。分からないか? なんと言えば良いかな、そのやってくる感覚がまるで肌に虫がざわざわと動いているようなそんな感覚だよ。……とはいえ、俺たちリザードマンの肌は硬い鱗で覆われているから、そんな感覚もあまり感じられないといえば感じられないのだがな」

 リザードマンは、背中を中心に堅い鱗に覆われている。
 しかしながら、お腹や膝裏といった部分は鱗ではなく柔らかい肌で覆われていることから、決してその防護は完璧とは言いがたい。
 だからこそ、兵士や親衛隊になったリザードマンは鎧を着けることを強制としている。そうしなければ心臓を狙われる可能性が非常に高いからだ。弱点を常に出しているのと等しい訳だから、それをわざわざ見せつける兵士など居るわけが無い。だから現に、親衛隊であるピローやラムスも鎧を着けているわけだが、

「……俺たちも、どうなるのかな。一度寮に返されるのかな?」
「可能性は高いと思うけれど、なんとも言えないよな。何せ、俺たちの目的は村長の警護だ。でも村長の家に武器を持ち込むことは緊急時を除いて禁じられている。それに今は重要な会議中だし。……案外、俺たちの命なんて軽く思われているかもしれないぜ」
「……どうだか。ま、俺たちはあまり考えない方が良いんじゃ無いか。とにかく今は、村長の警護のことだけを考えて……」
「やれやれ、何というか、いつまでもお前達は真面目のようで不真面目な連中じゃのう」

 そう言われて、ラムスとピローはそちらを向いた。
 そこに居たのは、村長の補佐であるバルダルスだった。
 バルダルスは老齢のリザードマンであり、村長よりも年齢が上だ。だから村長になってもおかしくはないのだが、バルダルス自体がそれを嫌悪しており、現在の補佐役に収まっている、というのが噂の範疇で語られている。
 バルダルスの話は続く。

「今、親衛隊として働いているお前達を特例で村長の家に入れることとなった。勿論、武器も装備したままで良い。何かあったとき、直ぐに向かえるようにするためだ」
「俺たちを……村長の家に、ですか?」
「どうした、何か問題でもあるか?」
「い、いえ。何でもっ」
「じゃあ、早く入って来なさい。……直ぐに村長の家は閉鎖する。衝撃に備える為だ。学者どもの噂によれば、地震が発生するとも|音速の波《ソニックブーム》が発生するとも言われておる。いずれにせよ、外に親衛隊を放置して置いて、殺すわけにもいかないのが今の状態だ。いいかね」
「わ、分かりました」

 ラルスとピローは急いで立ち上がると、踵を返したバルダルスの後をついて行く。
 そうして彼らは中に入る。

「失礼します」

 ラルスとピローはほぼ同じタイミングで頭を下げると、そのまま中へ入っていく。
 かしゃり、かしゃり、と鎧の金属がこすれる音が響く。

「……あの、取りあえず鎧だけ脱いだ方が良いですか?」

 ピローの問いに首を傾げるバルダルス。

「何故じゃ?」
「いや……会議とかしている中で、この音を出すのは少々集中が途切れるんじゃないかなーって……」
「特に気にしなくて良いですよ」

 そう答えたのはリルーだった。

「……あなたたちは、僕たちに無い力を持っている。そしてその力を使って村長を守っている。それって、立派なことじゃないですか。だから、別に気にすることはありませんよ」
「……リルー」
「……ありがとう。こういうときじゃ無いと、君たちに会えないし、話をすることも出来ない」

 リルーは頭を下げる。

「い、いや。君たちは別に何もしていないってわけじゃあないだろう? 僕らには……はっきり言ってしまって、学がない。でも学者になっている君たちはいろいろな作戦を立ててくれている。持ちつ持たれつの関係、とでも言えば良いのかな。そういう風に思えばいいんじゃあないかな」

 

027

「……天を裂き、大地を砕く啓示だよ」
 やがて一言だけ、村長は告げた。
「それは……!」
「文字通りの意味じゃて。何せ、それを聞いたのはここに居る、ファランクス様だからのう」
「……ファランクス様がそのようなことを……?」
「嘘ではないだろう。だが、いつやってくるかも分からぬその災厄に、我々はどう立ち向かえば良いのか……、それが問題だ」
「では、どうなさるおつもりですか。それを公表されるとか……」
「公表したところで何も変わらん。……強いて言うならば、混乱だけを招くものだよ」
「では……このまま公表なさらないつもりですか。その啓示が、もし本当ならばっ」
「分かっている!」
 村長ははっきりと言い放った。
 しかしその語気からは凄味などは感じられない。
「分かっている……が、これ以上はどうしようもない! はっきり言ってしまえば、我々の負けだ。何もできやしない!」
「……しかし、それでは我らリザードマンに死を言っているのと同義です」
「それは……!」
 これ以上は議論の無駄だ。
 彼はそう思って、祠を出ようとする。
 しかし、それよりも先に村長の手が彼の手を捉えた。
「何をするつもりですかっ。このままでは、我らはただ黙って死を待つだけになるでは無いですかっ!」
「だが、知らなければ幸せのまま終焉を迎えられる! 知ってしまえば絶望に悲観したまま終焉を迎えてしまう! それだけは避けねばなるまい、それだけは避けなくてはならないのだ」
「あなたは……っ」
 思いきり力を込めて、村長の腕を振り解く。
 村長は悲観に暮れた表情を浮かべたまま、ただじっとラムスを見つめていた。
 彼は村長の親衛隊だ。力には自信がある。それが例え村長相手であったとしても、その村長を力で捩じ伏せることだって出来る。
 でも、彼はしたくなかった。それをしようとは思わなかった。それをするはずがなかった。村長に崇敬の念を抱いており、村長を尊敬しているからこそなることが出来る『親衛隊』という職業を蔑ろにすることなど、彼には出来なかったのだ。
「……僕は、いや、私はこの事実を村のみんなに伝えます」
「伝えて、どうするつもりじゃ……」
「伝えて、それから、みんなで考えます。終焉を迎えない為にはどうすればいいのかを考えます」
「それで答えが出なければっ」
「その時は、その時でしょう。あなたみたいに既に諦めているわけではないっ。何処かに逃げ道を、答えを求めているのですから」
「……若者は強く、だが無鉄砲だ」
「それが若者の取り柄でしょう、若者は先が長い。一度きりの生涯をこんなところで諦めていいものか!」
「……確かに、君の言う通りかもしれないな」
 村長は目を閉じ、なにかを考え始める。
 やがて目を開けると、ゆっくりと頷いた。
「私が悪かった。……話をすれば何か具体的な案が思いつくかもしれん。ならば、早々に話をしようではないか。君が言うのではない、私からこのことについてははっきりと説明しよう」
「村長……」
「何をしょげておる。まだまだ始まったばかりだぞ。ここで諦めたら駄目だと言ったのは君ではないか、ラムス」
 それを聞いたラムスはゆっくりと頷いた。
「た、大変ですっ」
 そんな時だった。
 祠の前に、親衛隊の一人がやってきていた。
「ここには立ち入りを禁じているはずだが?」
 目の前にラムスが居るにも関わらず、村長はそんなこと関係ないように告げた。
 親衛隊の男は申し訳ございませんと頭を下げて、
「村長にどうしても話しておきたいことがありましたゆえ、こうして禁忌を犯している次第でございます。確かに、これはやってはならないこと。それは私たちも重々承知しております。しかしながら……」
「良い。それ以上は時間の無駄だ。それで? いったい何が起きたというのか、告げてみよ」
「はっ。実は……」
 すっ、と。
 彼は天を指差した。
 それを見た彼らは首を傾げるが、やがてそれを補足する説明が追加された。
「……天から光が落ちてきているのです。正体不明の、神からの贈り物のようにも見えるものなのですが」
「なにっ、天から光だとっ」
 慌てて外に出る村長。
 そして村長はそれを両の眼ではっきりと捉えた。
「おお……確かに、天から光が降ってきておる……。啓示は、間違っていなかったというのか!」
「は? 啓示、ですか」
「そんなことはどうだっていい! あれは何処に落ちる予定だ、はっきり述べ上げよ!」
「はっ。今調査を進めておりますが、このままの速度で向かいますと……、」
 ……およそ、二時間後には村の北東にある小島に落下するものと見られます。

 ◇◇◇

 村長の家、その中にある村役場の一室。
 既にその『天翔ける光』についての対策室が設置されていた。
「村長! 何処に向かっておられたのですか、我々は急いで調査を進めているところですが」
「そんなことはどうだっていい! 今は何処まで、何処まで調査が進んだ」
 学者の一人、リルーが手を挙げて述べ始める。
「現在、調査段階ゆえ、推測の域を出ませんが、あれは人工物であると考えられます」
 それを聞いた学者たちがざわつき始める。そんな推測など情報共有していない。彼らにとっては予想外の言葉だった。
 しかしながら、その反応は、勿論リルーには想定通りだった。
「……続け給え」
 村長だけが、平静を保って聞いていた。
「ありがとうございます」
 一息。
「……人工物の規模は定かではありません。しかし、ここ数年の天文学の記録によれば、このような大きな規模の落下物が出るとは、到底考えられないのです」
「成程、つまり君は過去の記録を参照した結果、『自然に落下する物体』では有り得ないということだな?」
「はい。あれはただの落下物ではありません。……ここから先は、私の予測ではありますが、あれには嫌な予感がします。歓迎するかどうかは別として、その人工物に乗る存在の命令を聞いておいた方が良い。そう感じられるのです」
「あれには何か乗っていると言いたいのか」
 しかし、それならば村長の聞いた啓示と予測は一致する。
 どのぐらいの規模によるかは置いて、その落下物が着水した程度で得られた影響など高が知れている。天を裂き、大地を砕く。その啓示には合致しないのだ。
 では、その啓示はどうやって実現されるのか。
 これは……村長は信じたくなかっただろうが、人工的なものではないか、と予測していた。大地を砕く程の莫大なエネルギーが発生するのではないか、彼はそう予測していたのだ。
 そして、それと同じ予測を、リルーも立てていた。
「……リルー、だったか」
 村長は重い口を開ける。
「はっ、はいっ。すいません、過ぎたことを言ってしまいましたかっ」
「いいや、そんなことは考えておらん。……寧ろその予測は私も考えていた」
「村長……様もですか?」
「そうだ」
 村長は頷く。
「私は……出来ることなら、君たちからその不安を払拭する材料を得たかった。だからこうして急いでやって来たという訳だが……、私と同じ予測を立てたのが一人でも居ると言うのならば、私の予測も、『机上の空論』ではないということだ」

 

026

 トロワに浮かぶ唯一の島、リバルサード。
 そこは外部からの人間を拒み、竜人――リザードマンが蔓延っており、独自の文化を形成していた。
 そして、リザードマンにとって兵士は男子の憧れの職業であり、村長を守るという任務において命を賭してでも実行するという志の高い民族だった。
 リザードマンの兵士、ラムスもその一人であり、今日も鍛錬に励んでいた。
 目的はいつどんな時であっても村長を守り抜くため。
 最悪、自分と賊が差し違えても構わない。そういった『覚悟』をもって彼らは生きているのだ。

「よっ、ラムス。今日も精が出るな」

 そんな彼に声をかけるのは、ラムスの幼なじみであるリルーだった。
 リルーは兵士ではなく、学者だった。彼はこの世界の歴史のすべてを編纂する仕事に携わっており、彼は毎日のように深夜まで仕事をしている。彼曰く、これは天職だと言っているが、彼の身体の様子を心配するリザードマンも少なくない。

「よう、リルー。今日もこれから仕事か?」
「ああ、どれくらいやっても終わることの無い仕事だ。やりがいのある仕事だよ。場所と時間と仕事は提供してくれる。仕事をしていれば、司書付のリザードマンが食事を持ってきてくれる。こんなに素晴らしいことは無い。そうだろう?」
「そうかねえ、俺は生憎頭が良いわけじゃあないからな。……お前みたいに、本と一生向き合う仕事なんてやっていたら、一日も持たずに気が狂っちまうだろうな」
「そりゃあ、言えてる」

 リルーは失笑しつつ、時計を見る。

「おっと、そろそろ行かないと。仮眠の時間を終わらせているのに、こんなところで時間を潰しているとばれてしまっては怒られてしまう。君も鍛錬頑張ってくれ」

 そうしてそそくさとリルーは去って行った。

「相変わらず、だな……」

 槍で肩をぽんぽんと叩きながら、彼は嘯く。

「……あれ? リルー、もうどっか行っちゃった?」

 それを聞いて、ラムスは答える。

「ああ。もう仮眠の時間が終わったんだと。……って、その声はサリアか。どうした?」

 サリア。
 リルーとラムスの幼なじみである彼女は、村長のお世話をしていた。
 代々、リザードマンの雌は一定の年齢になるまで村長のお世話をするということになっており、彼女もそれに従っている次第だ。そして、その一定の年齢というのが――お見合いの出来るようになり、さらに生殖機能がきちんと整った十八歳である。
 リルーとラムス、それにサリアは十七歳。年齢で言えばそろそろ大人の類いに入る。
 そんな彼らは、ある葛藤を抱いていた。
 リルーもラムスも――サリアに恋心を抱いていた、ということだ。
 サリアは当然それを知るよしも無い。そしてサリアもまた誰かを好き好んでいることは知っている。
 しかし、お見合いはそう希望を通してくれやしない。村長が相手同士を決定し、それに逆らうことは、一族の死を意味している。
 そんな封建的な村は、存続している。他者との交流を絶って、他者との影響を受けずに。
 それは村長の命令であり、人数が減少の一途を辿るリザードマンの決断でもあった。ここで仮に人間を出迎えたら、彼らの血がさらに薄まる可能性がある。村長はそう考えていたのだ。

「しかし、このままでは……」

 このままでは、リザードマンが滅びる。
 トロワという惑星に知的生命体が全く住み着かない惑星と化してしまう。
 きっと、それは村長も把握している事態のはずだ。しかし、村長が何か命令を出さないと、動くことが出来ないのがこの村のリザードマンである。
 リザードマンは上下社会であり、その上下の繋がりがとても強い。だからこそ、こういうものが成立出来ているとでも言えば良いのだろう。

「しかし、このままでは……」

 彼は考える。
 村長はきっと、何も考えていない、と。
 だから村長に従うべきでは無い、そう考えていた。
 勿論そんなことを言える心意気が無い。それに彼は村長の警備に当たっている。
 言ってしまえば、いつでも村長の寝首を掻くことが出来る。
 村長はいったい何を考えているのだろうか?
 村長はいったい、何をすれば良いと思っているのだろうか?
 彼は考える。しかしそれは村長にしか分からないことだ。彼がいくら考えようったって、それが分かる訳では無い。その思考はリザードマンそれぞれにある思考なのだから。
 ふと、彼が村長の家に目をやると、村長が裏口から外に出る様子を目撃した。
 村長は何か様子がおかしかった。きょろきょろあたりを見渡して、まるで何かに怯えているような、そんな感覚だった。

(……気になるな)

 単なる興味のつもりだった。
 ただ興味が湧いただけだった。
 そこで気づかないふりをしていれば――よかったものを、彼はそれについていってしまった。
 村長に気づかれないように、一定の距離を保ちつつ、姿を隠して進んでいく。
 そして村長が到着した場所は――村の奥にある石造りの祠だった。そこは普段立ち入りを禁じられており、それは村のリザードマンの共通認識だった。
 しかし、村長は、その扉をゆっくりと開けていったのだ。

「あそこが開くなんて、見たことが無い」

 気づけば、彼はそんなことを呟いてしまっていた。
 はっと気づいた頃にはもう口から言葉が出てしまっていた。
 慌てて手で覆うがもう遅い。しかし声のトーンが小さかったからか、村長にまで届くことは無かった。

「……いったい、あの中には何があるんだ……?」

 彼はさらについていくことにした。
 祠の中を覗き込むと、村長が棺に向かって頭を下げ、両手を合わせていた。
 それはまるで祈りのポーズにも似た何かだった。
 そして何か呟いているようだったが、流石にそこまでは聞こえない。

「……もう少し近づけば聞こえるかもしれないが……流石に近づきすぎる。もうこれ以上は分かりそうに無いな」

 そう思って、元の場所へ戻ろうとした――そのとき、

「ラムス。見ておったのだろう」

 村長の冷たい声が聞こえた。
 村長の言葉は、はっきりと伝わっていた。
 しかし、動くことが出来なかった。

「……ラムス。もう一度尋ねるぞ。見ておったのだろう? 正直に答えなさい」

 そして、彼はゆっくりと、口を開けた。

「……はい。申し訳ございません。裏口から出る村長様の姿が見えたものですから……」

 それを聞いた村長は深い溜息を吐く。

「やれやれ、気づかれないようにしたつもりだったがな……」

 そして、村長はゆっくりと振り返り、ラムスと対面する。
 ラムスはすっかり顔を強張らせていた。これからどんな罰が待ち構えているのか、と恐怖が彼を包み込んでいた。
 それを見ていた村長は、再び溜息を吐くと、

「別に苛めるつもりは無い。いいから、中に入ってきなさい」
「……宜しいのですか?」
「良い。私が許可する」

 そうして、恐る恐る、彼は祠の中へと入っていく。
 中はひんやりとしていた。まるでそこだけ空気の時間が止まっていたような、そんな感覚に陥らせた。
 祠の中は狭く、彼と村長が入ってしまうともういっぱいになってしまうくらいの狭さだった。
 そして祠の奥には棺が立てかけられており、剣が両手に抱かれていた。

「……あれは、一体何なのですか? 剣、のように見えますが」
「その通り。あれは剣だよ。……一万年以上も昔の話だ。かつてこの星がもっと広い場所だった頃の話、人間が争い、そして星は分裂した。その昔話は聞いたことがあるだろう」

 こくり、と頷くラムス。

「これは、そのときに使われた剣だよ。そして剣を持っているのはかつてのリーダーであり、我らリザードマンの英雄であるファランクス。今は風化してしまっており、ミイラと化してしまっているがね。彼の剣を、私たちはずっと守り続けているのだ。それを、神と同じく扱うために祠も作ってね……」

 一息。

「これは、代々村長になるリザードマンに教え込まれる話だ。だから、村長以外のリザードマンが知ることも無い。それがたとえ歴史の編纂に携わったリザードマンであっても」
「……これは、永遠に守られ続けられるのですか? 僕たちにも、真実を伝えぬまま」
「剣がどこかにあること自体は知られ続けていただろう。そして、ここには最初何が眠っていると考えられていたかね? いや、どう教えられていたか、と尋ねればいいか」
「……ここには、リザードマンの始祖であり偉大なる戦いで戦ったファランクス様を祭っていると、子供の頃から教えられてきました。しかし、こんな剣があるとは……」

 その剣を見て、ラムスは美しいと思った。
 一万年以上もこの場所に置かれているはずなのに、まったく風化されていないその剣は、まるで風化させまいという何かの怨みにも似た感情が働いているようなそんな感じにも思えた。

「……さて、戻る前に、お前に話しておかねば成るまい。何故、私がここにやってきたのか。そして祠の扉を開けたのか」
「祠の中身を確認したかった……ということですか? 誰かに盗まれていないか、とか」
「ほう。結構良いところを突いてくるな。……間違っていないよ、今朝そういう『啓示』があったのだ」

 啓示。
 村長は代々、そういった啓示を受ける一族の元に成り立つ。
 そしてその一族は、リザードマンの中でも優秀な血筋を持った存在であると信じられてきた。
 その村長が、不穏な啓示を受け取ったのだ。
 だから、祠にやってきたのだろう。

「それは……どんな啓示なのか、教えていただくことは出来るのですか」

 ラムスの言葉に、やがてゆっくりと村長は頷いた。

25.5

「次の目的地は何処になるんですか?」
「何処にしようかしらねえ」

 空港の行き先表示を見ながらメアリーは歌うように言った。

「……え? まさか未だ何も決めていないだとか」
「だって、帝国とロマも剣を狙っているのよ。これ以上の争いは出来ることなら避けておきたかったけれど、致し方ないと言えばその通りじゃない? だから、私としては数を稼いで貰おうかな、って」
「メアリー。あなた……オール・アイや帝国に数を稼いで貰って、それを根こそぎ奪い取るつもりね?」
「その方が楽でしょう? はっきり言って、私はリニック、あなたを戦闘要員と認識していないわけだし。……それくらいは分かって貰えるかしら? あなたは確かに必要な存在よ。けれど、戦闘が出来ない以上、あなたは『荷物』になっている」
「総帥、それは言い過ぎじゃあ……!」

 レイニーがリニックの前に出る。

「言い過ぎでは無いなら、何になるのかしら?」
「……レイニー。確かにその通りだ。僕は弱い人間だ。何も出来ない人間だ」
「リニック!」
「だから、僕に教えてください。皆を守ることの出来るぐらい、強い力を」
「……無理よ」

 メアリーははっきりと言い放った。

「えっ?」
「だから、あなたには無理。私たちが代わりに守って上げなくては成らないのだから。……とは言っても、その剣の使い方を学ぶ必要があるわよね」

 剣。
 いつの間にか手に入れていたそれは、マグーナ基地の祠で得た力の象徴だった。

「それをどう使うことが出来るか、それがあなたの中で一番重要な要素になりそうね」
「でも、問題としてはそれをどうするか、ですけれど……」
「いい修行場をしっているわ。少数民族が住んでいる場所なのだけれど。そこは強者を求める種族が住んでいる。トライヤムチェンという少数民族は聞いたことがあるでしょう? 彼らが分裂した、もう片方の民族……それがリードヤムチェン族。そして、その場所はトロワと呼ばれる小さな島と広大な海によって構成された星よ」

 飛行機の行き先表示板に、トロワ行きの飛行機が表示される。
 そしてそれを見つけたメアリーは、そこに掲示された入り口へと向かう。
 メアリーを追いかけるように、レイニーたちもそれを追いかけていくのだった。

 

 

 

 

第三章 終わり

025

 基地から脱出し、全員状態を確認する。

「……それにしても、ラグナロクにあの『眷属』が居るのは想定外なの」

 ライトニングの言葉に、メアリーは首を傾げる。

「どうして?」
「あの眷属は『|全能の目《オール・アイ》』。全てのことを見ることが出来る、眷属。見通すことの出来る眷属。その眷属と出会うと、運命が決まってしまう。そう言われているレベルなの」
「……オール・アイ。そんな眷属とどうやって契約出来たというの……」
「眷属は気まぐれなの。だから、もしかしたら偶然契約出来た可能性だってあるの。裏を返せば……」
「……もしかしたら、ロマから興味を奪えば彼女を味方にすることも出来る……?」
「……可能性はあるの」
「可能性、ね」

 メアリーはゆっくりと歩き始める。

「しかし、眷属の中でコミュニケーションとか取らないわけ? あなたの住んでいた世界……ええと、確か名前は」
「天界のことは、聞かない方が身の為なの。ただ言っておくと、あなたの世界から一つ次元を上げた世界と言えば良いの。神や、それ以外の存在が住む平和な世界。起源も終焉も誰も分からない、そのある種の終わりに近い場所。その場所に向かうことが出来るのは、僅かな存在なの」
「フルはそこに……」
「あくまでも、可能性の一つなの」
「可能性、かあ」

 メアリーは悔しそうな表情を浮かべる。

「でも、それが分かればそれでいいや。……さ、行きましょう。次の星へ。次の剣を手に入れるために」

 そして、彼らは旅を続ける。
 平和のためか、一人の人間のためか、終わりはまだ見えてこない。


 ◇◇◇


 ロマ・イルファとオール・アイは宇宙船に戻って、会話をしていた。

「次は如何なさいますか、ロマ」
「あなたの見解を聞かせて貰いたいわね、オール・アイ」
「私としては……次に向かうべきはトロワでしょうか。アント、トゥーラ、サンクとありますが……一番剣の反応が強いのはそこですね。放置されてしまっているのでしょうか、帝国もあまり気にしていない様子です」
「トロワ……大地の大半が海に沈む星だと聞いたことがあるけれど?」
「ええ。ですから少数民族が住んでいるだけ。未開の惑星です。帝国も手出しが出来ないのは、伝説の木を祭っている民族がいるからだとか」

 歌うようにオール・アイは言う。
 そしてオール・アイの言葉に首を傾げるロマは言った。

「伝説の木?」
「黄金に輝く木の実……あなたも知っているでしょう? この次元に必要の無い、上位世界からの落とし物、『知恵の木』があのトロワにもあると言われているのですよ。そして、彼らはその知恵の木を守っている。どうです、気になりませんか」
「気になるわね、とても」

 そして、二人の会話は終了する。
 次の目的地は、トロワ。


 ◇◇◇


「次はどこへ向かうべきかしらね」

 空港に着いたメアリーたちは、想像以上にスルーされていた。
 意外にも彼女たちはもう少し影響があったのではないか、と思われていたが、

「そこはあの将軍に感謝するしか無いかもしれないわね……。あの将軍、もしかしたら剣の力を集めさせたいのかもしれない」
「剣の力を?」
「剣の力を集めた人間は、どんな願いだって叶えることが出来る。噂程度の話だけれど……信じるのもいいとは思わない?」
「ですが、それは本当に」
「真実よ。十中八九、真実だから」
「……誰が、それを言ったんですか?」
「かつて、私が歴史書を見たとき、リュージュの書いた日記を見たのよ。……その頃から、オール・アイという眷属は世界に居たということは知っている。そして、オール・アイが『祈祷師』として存在していた、ということもね」
「それって、つまり……」

 リニックの問いに、頷くメアリー。

「ええ。つまり、そういうことよ。リュージュは二人居た。一人は本物のリュージュ・ホープキン、そしてもう一人が『眷属』たる存在。リュージュは眷属のオール・アイに操られていただけに過ぎない。この世界を守るためにも……オール・アイが何を考えているかは知らないけれど、その野望を止めなくてはならないのよ。それは世界の為にもなる」
「眷属ってことは、ライトニングと一緒ですよね? ライトニングにどうにかしてもらえないんですか?」
「出来るなら苦労しないの」

 こくこくと頷いて、

「それに、世界に眷属を存在させるということ、それがどれほど世界に無茶をさせているか分からないの? まあ、人間には分からないことかもしれないけれど、この世界に無茶をさせすぎて崩壊してもらっても困るの。だから、その為に無理矢理に眷属が介入してその崩壊を食い止めている、ということなの」

 意外とお喋りなんだな、とリニックは思いながらも、徐々にその事実をかみ砕いていく。

「……でも、それだったらオール・アイを追いかけた方が良いんじゃあ?」
「オール・アイも剣を狙っているでしょうね。そして、帝国も剣を狙っているはず。ねえ、リスト。あなたはどうする?」

 リストに尋ねるメアリー。

「どうする……って」
「あなたはカトルにお父さんを探しに来たのでしょう? ここであなたはさよならするか、私たちと旅を続けるか。それはあなたに任せるわ。どうする? 一緒に来る?」
「僕は……ここでお父さんを探します。探させてください」

 それを聞いたメアリーは頷く。

「そ。なら、それが一番ね。人生は一度きりなんだから、後悔しないようにね」

 そうして、メアリーたちは空港のコンコースを歩き始める。
 一人、取り残されたリストはずっと彼女たちを眺めていたが、

「あのっ!!」

 コンコースの空気が冷えたような感覚だった。時間が止まってしまったような、そんな感覚にも陥っていた。
 リストがメアリーたちに向けて大声を上げていた。
 メアリーが代表して踵を返す。

「……何?」
「ほんとうに、ありがとうございました!!」
「……ええ、ありがとう。私たちがここまで来られたのも、あなたのおかげよ」

 そして、再び時間が動き始める。
 雑踏にメアリーたちは消えていくのを見送って、リストもまた去って行くのだった。
 これが彼らの最後の別れ――にはならず、またどこかで会うことになる。
 それがいつになるかは、未だ彼らが知るよしもない。

 

024

「成し遂げたいこと? それは、善良な市民を利用してでも行わなくてはいけないことかね? であるならば、私に話すことの出来ることだな?」

 ミイラはメアリーに視線を合わせる。
 まるでミイラが生きているような、そんな感覚に陥らせる。
 そして、メアリーは諦めたかのような溜息を吐いて、発言した。

「かつての予言の勇者……フル・ヤタクミを蘇らせる。それが、私の野望よ」


 ◇◇◇


「フル・ヤタクミを蘇らせる……?」

 リニックの言葉に、メアリーはこくりと頷く。

「ええ。何も言わなくてごめんなさい。けれど、これだけははっきりしておきたかった。あなたを利用するために私たちはあなたを攫ったんじゃあない。……フルを救いたい。だから、そのために私はあなたを救った」
「それは救ったと言わずに、攫ったと言ってなんと成るんですか」
「ならないかもしれない。けれど!」
「――予言の勇者の復活か。しかし、それは間違っていない選択肢だと言えるだろう」

 ミイラ――シールダーは再び棺へと戻っていく。
 しかし剣のみは浮かんだままだった。

「……少年よ。未だそれを聞いてもなお、世界を救う覚悟があるならば、剣を抜き去っていくが良い」
「剣を抜く覚悟……」

 果たして、リニックにそこまでの覚悟があるのか。
 そして、そこまでの覚悟を作り出せる時間があったのか。
 それは誰にも分からない。彼にしか分からないことだ。
 でも、だからといって。
 覚悟がないと決めつけて良い理由にはなりはしない。

「……分かりました。僕は、覚悟を決めましたよ、メアリーさん」

 剣を手に取ろうとして、リニックはさらに話を続ける。

「フルさんの名前を聞いたことがある。それは歴史の上で『世界を滅ぼした悪』だと言われているからだ。世界をああまでした悪だと言われているからだ。けれども、僕はそうは思わない。メアリーさんを見ていると、フル・ヤタクミは本当に世界を救っていて、何故かは知らないけれど、世界から消えてしまっていたのだと言うことを思い知らされる。ならば、どうすればいい? どうすれば、僕はその役に就くことが出来る?」

 一息。

「簡単なことだった。全ては簡単なことだったんですよ。結局は予言の勇者に、僕たちはその力を預けなくてはならないのだけれど、その力を使うだけじゃあ、何も羽島ないし、意味が無い」
「……ほう。ならば、その力、どう使う」

 シールダーの問いに、リニックは目を瞑って、

「決まっている!」

 そして剣を構えた。

「その力は、誰のためでもない、世界のために使うんだ!!」

 そして、ミイラはその余波を浴びて――そのまま消え去った。
 剣もそのまま消えてしまったが、リニックは力を感じていた。
 激しい力が、自らの内から感じると言うことに。

「あーあ、あっという間に『剣』を取られてしまったではありませんか、ロマ。あなたが街であれも食べたいこれも食べたいと言っていたから」
「そうだったっけ? 言っていたのは、オール・アイ。あなたの方ではなくて?」

 声が、聞こえた。
 踵を返すと、祠の入り口には二人の女性が立っていた。
 そしてメアリーは目を丸くして、その場に立ち尽くしていた。

「……ロマ・イルファ。あなた……何処に行っていたの……」
「何処に行っていた? 随分なものぐさね。兄を見殺しにしたくせに」
「ち、違う! あれはオリジナルフォーズの攻撃に私たちが敵わなくて……。それはあなただって見ていたはずでしょう!?」
「ま、そんなことどうだっていいんだけれどさ」

 メアリーやライトニングを無視するように、祠の奥へと進んでいくロマとオール・アイ。
 そしてロマとオール・アイは、リニックと対面した。
 リニックの顔をじろじろと見つめて、一言呟く。

「ふうん、君が『剣の適格者』ね。何というか、あいつそっくりで憎たらしい」
「剣に選ばれる者には共通点があると言われていますから、相似するのも致し方ないことでしょう」
「……ふうん。ま、別に良いけれどさ」

 踵を返し、祠を出ようとするロマ。

「待って、ロマ・イルファ!」

 メアリーの言葉を聞いて、顔をそちらに向ける。

「何?」
「あなたはいったい、剣を求めてなにをするつもりなの……?」
「決まっているわ。あなただって知っているでしょう。お兄様の居ない世界なんて、もう要らない。けれど、お兄様を蘇らせる術を手に入れることが出来る、と分かれば動かないわけがない……」
「剣に齎される全能の力を、使おうというわけね……」
「あなただって、そうしたくて剣を集めているのではなくて? メアリー・ホープキン」
「違う、私は……」
「まあ、いいわ」

 再び顔を元に戻すと、祠を出て行くロマ。

「少年、せいぜい剣を集めなさいな。そして、いつかまた私たちと戦う時が来るでしょう。そのときを、どうか忘れないでおいてね。……ええと、名前は」
「リニック。リニック・フィナンス」
「そう。リニック。……覚えておくわ、また会いましょう、リニック」

 そして、ロマとオール・アイの姿は消え去った。

 

023

 そして、夜。マグーナ基地に潜入するべく準備を進めていたメアリーたちは、ライトニングの作り上げたホールにより、基地の奥深くへと入っていた。
 ……何を言いたいのかさっぱり分からないのかもしれないが、簡単に言ってしまえば、それはリニックにも分からないことだった。
 というわけなので。

「……いったい全体、どういうことなんですか?」
「あれ? 言っていなかったっけ、これは異次元を繋ぐホール。だから、どんな場所でも行くことが出来るの。但し距離に限界があるから、今回みたいに基地の外側からじゃあないと、基地に侵入することは敵わないけれどね」
「……最初からそれを使えば良かったんじゃあ?」
「だから距離の限界があると、言ったでしょう」
「実際には、無いの。でも使いすぎると人体に影響を及ぼす……かもしれないの」

 さらっと怖いことを言い出すライトニング。
 取りあえず中に入ったことは確かなので、ここから『祠』を探すことになる。

「……待っていたわよ、剣の適格者」

 しかし、それを待ち構えている人間が居た。
 それは女性だった。鎧を装備していた彼女の風貌は、兵士か騎士のそれに近い。

「まさか、待ち構えていたというの? ホールの出現場所を予測して?」
「ホールは、人間の居る場所をうまく避けて察知するはずなの。だから予測することなんて出来ないはずなの……」
「ふん。そんなことはどうだっていい。問題は、お前達のうち誰が適格者かということだ」
「それを言ってどうするつもり?」
「決まっている!」

 装備していた剣をぶん! と振り回し、

「本当に剣を使いこなすことが出来るのか……その力を試すのみ!」

 そして、彼らに向かって走り出す。
 ゴオッッッッッ!!!! と。
 まるで赤い閃光が駆け出すように、彼女の身体とリニックの距離は瞬間的にゼロになった。

「なっ……」
「……あんたね。中心に居る人物と言えば、あなたぐらいだもの」

 そして。
 ドガアアアアッ!!!!
 大きな衝撃が走った。


 ◇◇◇


 その衝撃によって、もう間に合わないと思っていた。
 土煙によって見えなくなっていた戦闘風景は、その更新を土煙が晴れるまで待機するしかなかった。
 そして、土煙が晴れると――そこにはリニックと女性、そしてライトニングが立っていた。
 正確に言えば彼女とリニックの間にライトニングが金属バットを装備して、無理矢理中に入り込んだ――とでも言えば良いだろう。

「お前……何故邪魔をする!」
「世界を救うと言われている存在を、守ることは私たち眷属の使命なの」
「ちぃっ、面倒くせえな!」

 乱暴な口調で言い張ると、そのまままた距離を保つ。

「……いい仲間に恵まれているようだねえっ! はっきり言ってしまえば、余裕だと言ってしまうべきだろうけれど、而して、あなたの力は無いようね。……世界はそれを選択した、ということかしら?」
「正確に言えば、選択せざるを得ない、ということよ。……世界がどうなるかは未だ決まっていない。その剣を手に入れることで世界を元に戻すことが出来る! けれど、帝国はそれを認めようとしない。認めたくない。認めようとは思っていない!」

 メアリーが地面に手を当てる。
 するとまるで地面が生きているように、手が生えてきた。
 まるで巨人のそれ――彼女はそれを見てそう思ったらしい。

「……錬金魔術かっ! 精霊の力をも使うことが出来る、その術を使うことが出来るのは最早生きている人間には居ないと思っていたが……」
「残念だったわね。未だ生きているのよ。……かつての予言の勇者の一行の、最後の生き残りがね!」
「……まさか、貴様、メアリー・ホープキンかっ!」
「そういうあなたは何者?」

 見事に手の攻撃を避けた彼女は、鼻で笑った後、

「私の名前は、カラスミ=ラハスティ。帝国の将軍よ。……覚えておきなさい、力を手に入れると言うことは、代償を手に入れるということに繋がるのだと!」

 そして、カラスミはそのまま姿を消した。

「……何がしたかったんだ? あのカラスミとかいう人……」
「さあ? さあ、祠に向かいましょう。目の前に石造りの建物があるでしょう? どうやら扉だけは開いているようね」

 確かに、石造りの建物が目の前にある。
 リニックはそれを見て、観音開きになっている扉を開いた。
 そして、主を待ち構えていたかのように、ミイラは目を開いている。

「……ついにやってきたか、剣の主よ」
「あなたが、メリア・シールダーね……。偉大なる戦いで活躍したという、盾の女性。あなたは、どんな試練を?」
「私は試練を出すことはない。強いて言うならば、『力』を正しく使うことが出来る人間かどうか確認させてもらいたい。ただ、それだけのこと」

 リニックは一歩前に出る。
 ミイラはふわりと浮かび上がり、剣はミイラとリニックの中心にちょうど停止した。
 そしてふわふわと浮かび上がると、そのまま剣はリニックを中心とするように周回した。

「……ふむ、どうやらおぬしは『力』があると認められたまま、そのまま自らの意志をなくしたまま行動しているようだな……」
「ええ……」

 嘘は吐けないと思ったのだろう。はっきりと、正直と告げるリニック。
 そしてリニックの言葉を聞いたミイラは、メアリーの方を向いた。

「かつての勇者を導いた者よ。百年を経過してもなお、世界を救う導き手となるか。それとも、お前も……何か私利私欲の闇が蠢いているように見えるが?」
「流石に、剣の守護者には隠し事は通用しない、ということかしらね……」

 そうして、メアリーは一歩前に進む。
 ミイラとメアリーは対面する。
 メアリーはゆっくりと息を吸って、そして吐く。
 そして、彼女は話を始めた。

「私は世界を救いたい。けれど……それ以上に成し遂げたいことがある。その為に、彼を利用しているのは確かよ。でも、それは世界の為にもなる。私はそう思っているの」

 

22.5

 ロマ・イルファはジェット機の中に乗り込んでいた。

「それにしても……まさか二日でここまで間に合うとは思わなかったわ」

 二日。
 僅か二日の間に、ラグナロクの面々から機械に詳しい人間が集まった結果、あっという間――とまでは行かないが、宇宙船型ジェット機の修理が完了した次第だった。
 オール・アイもそれを見ながら、笑みを浮かべる。

「ええ、流石にそこまで来るとは思っていませんでしたわ。……ここは、素直に彼らに感謝をしなければ」
「ところで、私たちはどうやって飛べば良いのですか?」
「そこもパイロットが……ほら、そこに」

 立っていたのはライラックだった。

「流石に全員を乗せることは敵わないっすけれど、それでも問題ないと言ったのは、そっちですよね?」
「ええ。宇宙に飛び立つことが出来れば、それで構わない。……強いて言えば、カトル軍が私たちを攻撃してくる可能性もあるから、そこに関しても注意しなくてはいけないと思うのだけれど」
「そこですよね……。まあ、私の『力』でどうにかしますか」
「オール・アイ……あなたの力って予言だけでしょう? 別にシールドを張れるわけじゃああるまいし、少しは考えておいたほうが良いと思うのだけれど」
「それくらい承知していますよ。……ライラック、私をコックピットに乗せることは可能ですね? 操縦は出来ませんが、安全なルートを教えることは出来ます」
「え? ああ、まあ、大丈夫ですけれど。もう飛び立てますが、行けます?」
「ええ。人数もそろっているしね」

 ロマとオール・アイの他に、屈強な人間が十人ほど。
 すべて魔術というよりは体術に秀でた人間をそろい踏みした形だ。

「……さて、これで問題ありませんね。では、私はコックピットに向かいましょう」

 そうしてオール・アイは離れていった。

「……お嬢、聞きたいんですが、あいつはいったい何者なんです?」

 問いかけたのはロマの隣に座っていた大男――バグジーだった。
 バグジーの問いにロマは答える。

「別に気にすることでもないわよ。彼女はただの眷属。言ってしまえば、人ならざる者。だからこそ私と彼女はともに戦うことを決意したし、目的が同じである以上、協力しているって話」
「協力?」
「あら? 言わなかったかしら、目的。……剣を手に入れた者は、どんな願いをも叶えることが出来るのよ。それで私はある願いを叶えるの」
「もし、可能なら教えて貰うことは、」

 バグジーの言葉が最後まで言い切ることはなかった。

「だめよ。それは内緒なの。女の子は最後まで秘密を持っているものなの」

 そして、ジェット機は運転を開始する。
 向かうべき場所、それは、宇宙。

 

022

 早々にレストランを後にしたメアリーたちは、車を借りて、基地のそばまでやってきていた。

「そういえば」
「何?」
「一つ疑問があるんですけれど」
「言ってごらんなさい」
「……別の星に移動するにはどうするつもりなんですか?」
「そりゃあ、船を奪うかちゃんとしたやり方で移動するかのいずれかね」
「ちゃんとしたやり方、とは」

 メアリーは胸を張って答える。

「そんなことも知らないのかしら? カトル、そしてほかの三つの星とアースは定期便で結ばれているのよ。だからアースみたいにステーションがあって、そこから宇宙の旅に出られるわけ。それを利用するの」
「成程……?」
「それ、絶対分かってない顔よね?」
「分かりました?」

 メアリーとリニックの茶番はそこそこにしておくとして、

「……で、話を戻しますけれど」

 呆れてしまったのか、溜息を吐いてからレイニーは話し始めた。

「問題はどうやって剣を手に入れるのか。そして、剣を抜いた後に『封印』はどうすべきなのか」
「何言ってんの。破壊するに決まってるわよ。その為に私は命削ってまで眷属と契約までしたんだから」
「眷属……ライトニングのことですか? 正直、彼女を一戦力として考えるのは、」
「言っておくけれど、今回の任務は彼女が居ないと成立しない」

 メアリーははっきりと言い放った。
 しんと静まり返った空間を見回して、さらに彼女は話を続ける。

「彼女の能力を使うからこそ、私たちは組織として活動出来るといっても過言では無いわ。それに、あなたが思っている以上に彼女は優秀よ。……まさか、そんなことも分からなかったの?」
「分かるわけないじゃないですか。簡単に力量を推し量ることなんて出来やしませんよ。……なら、いいですけれど」
「そうそう。素直に認めるのは良いことね。……話を戻すけれど、ライトニング、あなたの体調は問題ないわね?」
「問題ないの。私の能力を使えなくするような特殊なプロテクトもかかっていないようだし、あっという間にクリア出来るの」

 こくこく、と頷いて見せつけるように金属バットをこちらに動かすライトニング。
 正直、いつそれを何処から召喚して、また仕舞っているのか分からないし、何故金属バットなのかも分からなかった。
 そこの辺りに関しては、正直『理解しなければならない』ところなのだろう。リニックはそんなことを思っていた。

「……とにかく、一つ聞いておきたいんですけれど、『封印』って何ですか?」
「言っていなかったっけ? 要するに、偉大なる戦いで星が五つに分かれたでしょう? それと同じように人間と、メタモルフォーズも、五つに分かれたのよ。けれど、アースを含めた五つの惑星は運が良いことに剣をもって封印となった。それが、封印」
「つまり……メタモルフォーズが目覚めるってことですか!?」

 メタモルフォーズ。
 今の時代からしてみれば、アースの大半を占める赤い海に蔓延っている存在であり、人類の永遠の敵であると認識されている。
 その存在と、戦う日がやってくるなんて夢にも思っていなかった彼は、身震いした。
 正確には、武者震いか。いずれにせよ、震えが止まらなかった。
 そこに、レイニーが手を取った。
 彼の手を、レイニーの手が触れた。

「……レイニー」
「震えてる。しっかりなさい、あんたは英雄なんだから。英雄と呼ばれる存在なんだから。だからあんたがしっかりしないと、この作戦は上手くいかないの。オーケイ?」
「……オーケイ」
「よっし! それくらい理解してくれればあとは問題なし! 夜まで待機して、基地へ侵入するぞっ! 準備は良いかな?」
「オーケイ」
「オーケー」
「オーケイなの」
「よっしゃあ! じゃあ、休憩するわよっ」

 どこからか取り出した人数分の寝袋とテントを持って言うメアリー。

「……どこから持ってきたんですか、なんて話は野暮ですよね」
「ええ。分かってくれて良かった。これは、ライトニングがつなげられる異世界に置いてあるの。流石でしょう? 眷属の力をこう使うのはどうかと思うけれど……。ま、彼女も了承して貰えているし、問題ないと思うわ」
「問題ないの。その代わりのものも貰っているし」
「代わりのもの?」
「さあ! 眠りましょう……なんて言っても簡単に眠れないわよね。ここで一つ、英雄譚を語って上げましょうか。昔々の物語を」
「聞き飽きましたよ、百年前の物語なんて」
「そんなこと言わないの。じゃあ、話し始める前にテントをちゃっちゃと組み立てましょう!」

 そして、彼女たちはテントの組み立てに取りかかる。
 本当にこんな気分で良いのだろうか――なんてことをリニックは考えながらも、彼女たちに流されてしまうのだった。


 ◇◇◇


 そして、その様子を眺めていたのは、カラスミ=ラハスティだった。
 カラスミが持っていた双眼鏡を、兵士に渡す。

「……どうですか?」

 兵士の問いに、頷くカラスミ。

「恐らく、彼らが言っていた『密航者』に間違いなさそうね。……ま、放っておきましょう」
「……え? 今、なんと?」

 兵士は、耳を疑っていた。
 カラスミが言うはずの言葉と別の言葉を聞いたからだ。
 カラスミは深い溜息を吐き、踵を返す。

「だから、言ったでしょう。放っておきましょう。どうせ、あいつらは必ず基地に入って『剣』を手に入れる。だから、待ち構えてやりましょう。……良いわね? 絶対に手を出しちゃいけないからね?」
「わ、わかりました」

 兵士は敬礼をして、カラスミに答える。

「宜しい。それじゃあ、私は休憩してくるから」

 踵を返すと、カラスミは見晴台から去って行くのだった。

 

021

「!」
「私の存在がどういう存在かは知っているだろう、カラスミ=ラハスティ。メリア・シールダーとして、私はどう生きてきたか」
「偉大なる戦いにおいて、『盾』の戦績を誇る英霊だ。あなたは、たくさんの人々を救い、たくさんの人々を守った。そして、世界は五つに分割されたが、このカトルであなたは帝国の礎となる『帝国会議』の制定を行った。そこまでは、歴史の教科書でも学べるレベルの出来事かと記憶しているが」
「そう。帝国会議。そいつが問題だった。……平和となった世界に、果たして戦力は必要かね?」
「いいえ。必要ないでしょうね」
「その通りだよ。世界が平和になった以上、剣の存在意義はなくなった。だから、剣を管理している私は帝国会議から外され、権力を失った。そして辺境の地で剣を管理することとなったわけだ。……それが、異形を封じる力であると言うことも知らずに」
「そして、それがこれ、ということか」

 ミイラの向こうには、巨大な頭があった。
 それは人間の身体が浮かび上がっていて、異形と表現するほかなかった。
 ミイラの話は続く。

「そう。メタモルフォーズと呼ばれるこれは、人間の中ではとっくに滅んだモノだと思われていた。……ところが、人間はメタモルフォーズのことを忘れただけに過ぎなかった。メタモルフォーズはそんな簡単に滅びる訳がないのだよ。何せ、人間をウイルスとして認定している以上、それをエネルギーとしているのだから」
「ならば、進言すれば良かったはずではないのか。そうでなければまた違った未来が……」
「しなかった、と思っているのかね? カラスミ=ラハスティ。私が、そんな愚かな行為に逃げたと思っているのか?」

 何も言えなかった。
 何も言い出せなかった。

「……まあいい、君に言ったところで何も変わらない。それに、この剣は君に扱うことは出来ない。一応言っておこう。無理に引き剥がせばこいつが目を覚ますぞ。この剣はそのためにここに封印されているのだから」
「……ならば、私の悲願を叶えてくれるつもりは無いと言うことだな」

 踵を返すカラスミ。

「何処へ?」
「決まっている。ここにやってくる英雄とやらを待ち構える。そいつが何者であるかを確かめる。私よりも弱いならば、そいつにくれてやる剣もまた弱い力なのだと、思うしかない」
「……人間とは、斯くも争いを求めるのだろうか。教えてはくれないかね?」
「さあね。遺伝子にでも刻まれているんじゃないか?」

 そうして、祠の扉は閉ざされた。


 ◇◇◇


 カトル帝国、マグーナ基地近郊の町、ラフィアス。
 その寂れたレストランにリニックたちはやってきていた。

「……先ずはここで情報収集といったところかしらね」

 メアリーは椅子に腰掛け、メニューを眺める。そのラインナップはどうも気に入らなかったらしく、苦々しい表情を浮かべながら他のメンバーにそれを手渡した。

「私、コーヒーでいいわ。あなたは?」
「僕もコーヒーでいいかな。食欲は……今はちょっと沸かないから」
「私もコーヒーで」
「あ、僕も」

 こくこく。ライトニングは頷く。どうやら彼女もコーヒーをご所望らしい。

「それじゃあ、店員さん、コーヒーを五つちょうだい」

 いつの間にか居た老齢の店員は頷くと、そのまま店の奥へと消えていった。

「何よ、ほんと無愛想ね。……客人をもっともてなしなさいよ」

 メアリーはそう吐き捨てるように言うと、少しだけ顔を近づけた。

「で。どうしましょうか、これから」
「ええっ。それを話し合うんじゃないんですか」
「そうよ? だからこういう場所を選んだんじゃない。お誂え向きの場所を、ね。本当は夜遅くにでも出るべきかな、と考えているけれど、どうかしら? 生憎、未だ私たちがここにやってきていることは知られていないようだしね」
「どうして分かったんですか?」
「手配書よ。あんだけの大騒動を巻き起こしたら、手配書の一つや二つ看板に掲げられていても可笑しくはないでしょう? それに軍とすれ違ったときも変な反応をされなかった。それはつまり、未だ軍に私たちのことが認知されていない、ということなのよ」
「そういうことなんですかねえ……」

 少しするとコーヒーがやってくる。それぞれの前に置かれると、一礼し店員は去って行った。

「……私が何か言ったからかしら? 何だか少しだけ丁寧になったような……」
「気のせいですよ、きっと。それで、基地はどういう状況になっているんですか」

 コーヒーを啜りながら、リニックは言う。
 熱いコーヒーだったが、味はひどいものだった。はっきり言って、薄い。コーヒーを水で薄めたようなそんな感覚だった。
 しかし顔には出さずに少しだけ飲んで、テーブルにそれを置く。
 待ってました、と言わんばかりにメアリーは地図を取り出すと、基地周辺の地図だけを見やすくするように折り畳んだ。

「今、私たちが居る場所がここね」

 ペンで指さす場所は、基地から少しだけ離れた町だった。
 そして、そこから基地のある場所までペンを移動させていく。

「ここまでの移動手段なのだけれど……。やっぱりさっきと同じように歩きになるかなあ、と思っているのよ。その方が隠れて入ることが出来るからね」
「ええっ、また歩くんですかあ……」

 直ぐにレイニーの疲れた口調の言葉が聞こえてくる。

「鍛えているんじゃないのか?」
「いつもそれを言いますけれど、歩くったって限度がありますよ、限度が」
「それは確かに彼女の言うとおり。歩くとしても限度がある。現に私たちは三キロメルの道のりを歩いてきたわけだから(注:一メル=一メートル)」
「じゃあ、何か手段が?」
「車をここで手配するわ。運が良いことに、レンタカーをしている店を見つけたのよ。それも一日金貨一枚。ちょっと高いけれど、致し方ない出費ね。これで基地の周辺まで向かい、そこからさらに調査を開始する」

 確かにそれなら体力を疲弊することもない。
 リニックはそう思うと、ゆっくりと頷いた。

「じゃあ、車で基地の周辺まで向かって、そこからは徒歩……ってことですね」
「ええ。そういうことになるわね。特に問題は?」
「やったあ。それなら問題なしです、総帥!」

 さっきと打って変わって、明るい表情を見せるレイニー。
 それを見たリニックは少しだけ微笑ましいと思ってしまうわけだが。

「……でまあ、問題なければ今直ぐにでも出発しようかな、と思っているのよね。何せ、距離がないとは言え、夜に出かけると町の人間から怪しまれる。それだけは避けておきたいのよ」

 それはその通りだった。
 剣を手に入れるまでは、出来ることなら派手な行動は起こしたくない。それはメアリーたちとリニックの共通認識だった。
 メアリーの話は続く。

「ま、そういうわけで今から車を手配しに向かうわよ、先ずはこのコーヒーを飲んでから、ね」

 そしてコーヒーを一口啜るメアリー。
 少しきょとんとした表情を見せるが、やがて苦々しい表情へと変わっていった。

「……不味いわね、このコーヒー」

 その言葉に、賛同しない者は誰一人として居なかった。

 

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