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2018年06月10日の記事は以下のとおりです。

034

「何故あいつらは、剣をそこまでしてほしがるんだ……?」
「はい?」
「いいや、お前達には言っていない。お前達は引き続きここの捜査を続けろ」

 そう言って、カラスミは地下トンネルの奥へと進んでいく。今は列車が通ることも無い、誰も通るはずが無いその通路を歩いて行く。
 それを見た警備隊の二人は、きょとんとした表情を浮かべていたが、彼女が遠ざかっていくのを見て、再び仕事に取りかかるのだった。
 カラスミは怒っていた。
 何故我が国の人間を犠牲にしてまで、その剣を狙っているのか。
 今回の事故が誰によるものか分からない。だが、剣の眠っている祠へ向かうにはこの地下トンネルが最適解であり、それはカラスミたちも把握していた。

「……だからこそ、彼奴らの行動が気になる。このまま行けば、まず確実に帝国とぶつかることになるだろう」

 では、どうすれば良いか?
 そこまで待機していれば良かった話だったのに、どうして表に出ることになったのか?
 その引き金となったのは、その鉄道事故と言えるだろう。列車爆発事故により多数の人間が亡くなった。そしてそれが祠に一番近い地下トンネルの入り口付近での事故となると、カラスミも動かなくてはならない。そういう結論に至ったわけだ。

「……彼奴らめ、世界をどうするつもりだ……?」

 それは、実際に聞いてみないと分からない。
 そして、それを突き止めなくてはならない。
 それが彼女の使命であり、軍と剣を任された彼女の仕事だった。


 ◇◇◇


「……それにしても、彼女に剣を任せて構わなかったのですか?」

 会議室。キャビアの隣に、一人の少年が座っていた。その少年はその場には似つかわしくない雰囲気を醸し出していたが、不思議と溶け込んでいた。

「うん! だって、一番『適性』があったのは彼女だったからね。けれど、一番の適性は残念ながら既にメアリー・ホープキンの手に落ちている。それは分かっているよね?」
「ええ。分かっておりますとも。……ですが、彼奴らに剣を手に入れられるのは時間の問題……」
「だから、それをどうにかするのが君たち軍の仕事でしょう? 僕の職業は?」
「……カトル帝国皇帝、アンチョビ・リーズガルド陛下にございます」

 そうそう、とアンチョビは言って、

「だから僕の言うことを素直に聞いて、彼らに盗まれる前に剣を手に入れる。そして、剣の使い手も手に入れる。それが君たちの一番の任務だって話は……キャビア将軍、あなたにしたはずだけれどなあ?」
「お、お仕置きですかっ」

 キャビアが慌てた表情を浮かべている。
 それをニヤニヤと見つめているアンチョビ。

「どうしようかなあ、取りあえず剣は今彼女が持ち合わせているんだよね。そんでもって、今はこの星にある祠に向かっている。けれど、今、祠には別の一派もきっと向かっているだろうね。となると、その祠には、持ち主は違うとはいえ、欠片が全て揃うということになる」
「……というと?」
「剣が真の力を得るチャンスだということだよ。それは誰にも分かっていない。分かっていたら、そもそも近づけることなどしないはずだからね」
「剣と、所有者たる格を持つ人間が居ることで自動的に剣の封印は解かれる、と……?」
「そうそう。人間のくせによく分かっているじゃあないか。つまりはそういうことだよ。この世界がどう傾こうとも僕の知ったことじゃあない。そもそも、帝国としてはあれを封印するに留めているのは、あれを破壊することが出来ないからだ。世界の管理者たるガラムドが何か力をかけているのは分かる。しかしそれを解除することは出来ない。所詮、僕たち眷属はガラムドより低い次元の存在だからね。そして、それよりも低い次元に君たち人間が存在しているわけだ」
「それならば……何故我々はそれを管理しなくてはならないのですか。破壊しなくとも、何処か永遠に消し去ることだって……。そうだ、宇宙に飛ばしてしまえば永遠にこの世界には戻ってこない! そういうことだって考えられたはずです」
「考えたさ。そして実際に実行された。でも、だめだった。結局、この世界にあれは必要だった。たとえどんな力を得ようともこの世界にはあの剣は必要だった。シルフェの剣、その完全体……オリジナルフォーズを完全に破壊できなかったのは、敵の魔術師が剣を六つに破壊し、プロテクトを行ったからだ。そしてそのプロテクトは、この二千年で、やっと解放される。まるで、来たるべき時を待っていたかのように」
「……陛下、何をおっしゃられているのか、さっぱり分からないのですが……」
「簡単なことだ」

 立ち上がり、アンチョビの話は続く。

「この世界を生かすも滅ぼすも、あの剣次第だということだよ」


 ◇◇◇


 一番最初に祠に到着したのは、誰だったか。
 答えは、オール・アイだった。

「ついに祠に到着しましたか……。ロマ、準備は良いですね?」
「大丈夫よ。……ところでここには何があるのよ?」
「剣ですよ。そして、試練を司る古い人間が居ますが、そんなことはどうだっていい。力でねじ伏せるだけに過ぎません」

 石の扉を開けると、そこにはミイラが眠っていた。
 そしてミイラが抱え込むように剣が置かれていた。

「これが剣ね……」
「ええ、それよりも先に、この『ミイラ』を破壊します」

 そして、オール・アイは右手を掲げる。
 するとミイラはまるで砂上の楼閣の如く、さらさらと崩れ去っていった。
 残された剣が、ごとり、と棺の中に落ちる。

「さあ、これで二つ目です。手に取って構いませんよ、ロマ」

 そう言った矢先――剣がふわりと浮かび始める。

「?!」

 ロマは驚いてその剣を取ろうとするが、

「いけません、ロマ。避けてください!」

 オール・アイの忠告空しく、ロマはそのまま剣に切り裂かれてしまった。
 そしてロマだった身体は水にその姿を変え、そこには小さな水たまりが出来ていた。
 剣は祠を抜け出し、一直線にどこかへと向かっていった。

「……不味いですね、まさか剣が既に五本揃っているということですか……!」

 流石のオール・アイもそこまでは想定出来なかったのだろう。
 となると、向かった先は容易に想像出来る。

「あの剣を使われては成らない。使って貰っては困るのですよっ!」

 そうしてオール・アイはロマのことを見ることも無く、そのまま走り去っていくのだった。

033

 そして、三日後。

「……ついにここまでやってきたわね……」

 地下鉄のトンネル、その入り口にメアリーとリニックが隠れていた。隠れている理由は単純明快。軍の兵士が地下へのトンネルに検問をかけているためだ。だから鉄道も一度停止して全員の個人情報を確認せねば進めることが出来ない。

「想像以上に、厳重体制で剣を隠しているのね……。何というか、これじゃあ、埒外よ。どうしようもない」
「でも、これから陽動をかけて……」
「ええ、だから生まれる隙はほんの一瞬でしょうね。それを利用して、」

 どがあああああああああああん!!!! と巨大な爆発音が聞こえた。
 その爆発音は何かを破裂させたような音で、恐らく何かを仕掛けていた爆弾が爆発したものだろう。
 そして、その爆弾は先程検問を通っていた列車からだと確認出来る。

「……何が起きたの……?」

 流石に予想外の行動が起きたので、メアリーは目をぱちくりさせていた。
 しかし、リニックは違う。
 そんなことを確認するよりも、行動あるのみという手に出たのだ。

「り、リニック!」
「行くなら体制が混乱している今です! 狙っているかどうかは分からないけれど……もしかしたらあの手口は、オール・アイの可能性だって有り得ますよね?」
「オール・アイが……。成程、面倒ごとを全て吹き飛ばしてしまえ、という戦法ね……。むちゃくちゃにも程がある戦法といえば、その通りかもしれないけれど、」
「そんなことを言っている暇があるなら、さっさと行きましょう!」
「わ、分かっているわよ!」

 そして、メアリーとリニックは爆炎立ちこめる列車爆発事故の現場へと向かうのだった。


 ◇◇◇


 そして、一足先にその現場を通過している人間が二人。

「ライラックがまさかこんな作戦を思いつくなんて思いもしなかったけれど、」
「でもおかげで先に進めましたね?」

 オール・アイの言葉に、そりゃあそうだけれど、と答えるロマ・イルファ。
 列車爆発事故の要因は、小型の水素爆弾だ。
 ロマ・イルファは水を生み出すことが出来る。その水を電気分解した後、炎をぶつける。それにより爆発的なエネルギーを生み出すことが出来る。それが水素爆弾の簡単なメカニズムだ。

「水素爆弾、ね……。随分と昔にもそんな戦法を利用した人間が居たような気がするけれど」
「何か言ったかしら、ロマ・イルファ?」
「いいや、何も。……あとは、どう進めば良いのかしら?」
「ええと……」

 オール・アイは目を瞑る。
 そうして持っていた杖を彼女の顔から少し離れた位置で一周回すと、目を開いた。

「分かりました。さ、先に進みましょう」
「一応確認だけれど、本当にそれで分かったの?」
「分かりましたよ? 確認します?」
「確認する方法がどうやってあるというのか、逆に教えて欲しいレベルなのだけれど」

 そうして、彼女たちは先に進む。
 祠へと向かう最短ルートを通って、彼女たちはさらに前へ、前へ。


 ◇◇◇


 ぱちり。電気がはじける音がトンネル内に響き渡る。
 燃え尽きた後の列車を実況見分するのは、警備隊の仕事だ。
 しかしながら、今日は訳が違う。
 何故だかその実況見分に、帝国のカラスミ=ラハスティ将軍が同行するということになった訳だ。

「なあ、どうしてカラスミ将軍がいるんだ?」
「知るかよ、そんなことよりさっさと実況見分終わらせちまおうぜ。見た感じ、ただの爆弾によるものっぽいしよ」
「そこの警備隊、今の話、少し聞かせてくれないかな」

 警備隊の二人の会話を、カラスミは聞き逃さなかった。
 カラスミの言葉に二人は即座に敬礼し、丁寧に情報を提供する。
 下手に変なことを言ってしまうと、その場で斬首ものだ――あくまでも噂の範囲だが。

「……成程。ということは、水を使った爆弾ということだな?」

 一通り話を聞き終えたところで、彼女はそう結論づけた。

「いえ、正確には水を構成する分子によるものが原因でして……」
「?」

 カラスミは首を傾げ、

「私は難しい話が苦手なんだ。要するに、水が原因で作られた爆弾なのだろう? そんな爆弾を開発可能な施設は? この星に存在するのか?」
「い、いえ……。確かにこの分子は水を構成する分子によるものですが……、流石にそれによる爆弾を作ることが出来るか、と言われると……」
「無理なのだな」
「は、はいっ」

 カラスミは踵を返す。とどのつまり、この爆弾は進みすぎた科学……或いは魔術かもしれない、によって開発されたものである、と。
 と、なると、答えはただ一つ。

「これを生み出したのは、オール・アイの一派か、或いはアンダーピース……。いずれにせよ、我が国に被害を齎すなど絶対に許せん」

 今回の列車事故では、何人もの人間が亡くなっている。
 それについては原因究明が急がれるばかりだし、犯人も捕らえなくては成らなかった。

「いずれにせよ、奴らは我ら帝国にやってくるはずだ」


 ――理由は単純明快。剣の欠片を三つこちらが所有しているからだ。


 だが、その剣がどういう意味を成しているのかは明らかになっていない。『偉大なる戦い』によって使われた剣であるということは明らかになっているし、歴史の教科書にも載っている程の常識だが、しかしながら今になってそれを使う意味がさっぱり分からない。
 それを使うことで、世界を変えてしまう程の力を得てしまうからか?
 それとも、それを使わなくては成らない程の脅威が出現してしまうのか?
 結論は考えても出てこない。それに、幾ら考えたところでそれが正しいかどうかははっきり分からないし、分かるはずが無い。だったらさっさとどちらかを捕らえて吐かせれば良いだけの話だ。それがどうして今に成って必要になったのか、その理由を。

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