皇暦七四一年、ハリー=ティパモール共和国首都のとある一室。
 送付先不明の手紙には、こう記されていた。

『ハロー、こうして手紙を書くのは、初めてですね。
 あれから、実に十年の月日が流れました。あっという間というか、感情的になるというか、思わず溜息が出てしまう程の月日が経過してしまったことになります。
 あなたが居なくなってからの十年もまた、あっという間でした。それ程時間はかからなかったと思っていました。あなたにはあなたの世界があり、あなたにはあなたの生き方が残されていたのですから。
 今、私たちの状況について簡単に説明させてください。
 今、私たちは、また大きな戦争に巻き込まれています。
 ハリー=ティパモール共和国を中心とした連合国と、リリーファー反対派による戦争です。勿論、私たちが勝っています。リリーファーに適う相手など、リリーファー以外にあり得ないのですから。
 しかしながら、その戦争を吹き飛ばす程大きな出来事が起きました。
 スカブ。
 一週間前から突如として、我々の大地の外に出現したそれは、徐々に我々の大地を侵食しつつあります。
 リリーファーでも倒すのがやっとの状況で、人間はリリーファーに頼ることを選択せざるを得なくなりました。
 大きな争いのために、戦争という小さな争いを止めたのは、皮肉かもしれませんけれどね。
 でも、このままでは、我々は死んでしまう。
 スカブの侵食を食い止めることが出来なかった我々に残された大地は、ハリー=ティパモール共和国と、法王庁自治領の一部のみ。
 ねえ、タカト。
 もしこの手紙が届くなら。
 もしこの手紙が見えるなら。
 私たちを――助けて』




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