【Pick up】西暦二〇一六年に発生した『世界のゆがみ』について


 西暦二〇一六年に、起きたと言われているその出来事を忘れちゃあいないかい?
 世界が破壊されるんじゃあないか、という理論を打ち砕くがごとく、広い空に突然声が響き渡ったんだ。
 その声は、今も忘れられないね。
 それがとてもキュートな声だったから?
 それがとてもダンディーな声だったから?
 いいや、違う。そのどれでもない。そのどれだってないんだ。
 彼は自らをこう名乗った。『イザナギ』と。かつて神話の中で登場した、日本を作りしカミサマだ。
 そしてそのカミサマはこう言い放った。
 人間と、戦争をしましょう、と。
 それを嘘だと思った人間がいた。
 それを誤りであると思った人間がいた。
 しかし、それを肯定した人間もいた。
 人間の世界は、とうに崩れ去っていて、しかるべき対応を神自らが取るのだと、宣言した。
 彼らは、後に宗教組織『新世界』……だったっけ? それで合っていたと思うのだけれど、それを設立して、信者を集めるようになった。最初は胡散臭い宗教だとは思っていたんだよ。けれど、徐々に『異変』が起こり始めて、人々はその宗教はあながち間違っていないと思うようになり始めた、ってわけ。

 ある日は地震が起きた。震度六を超えた地震だったけれど、人々は普通に生活した。
 ある日は火事が起きた。いろんな人を焼き尽くした火事だったけれど、人々は普通に生活した。
 ある日は台風が起きた。たくさんの死者が出た。それでも人々は普通に生活した。

 否、否、否。
 その背後には、『人々が普通に暮らすことの出来るよう』闇に潜んだ存在が居ることを、彼らは知らない。
 知っていることを知らないと思うより、知っていることを知っていると思った方が、何倍も良いということだ。認識の違いというよりかは、認識の差異と言うところだろう。

 しかしながら、政府は一つの結論を導いた。
 世界を闇に封じ込める前に、それを担う『担い手』を決めなくてはならない、と。
 宮内庁神霊班を主導として、外界より途絶された空間『戦闘城塞』を完成させ、そこで担い手を決定するトーナメントを開始する、という結論に至った。

 そして、一年の月日が経過した。

 西暦二〇一七年、夏。
 世界と人類を巻き込む大戦争の始まりが、この戦闘城塞にて起こるのだった……。



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